七転び八起きでは足りないほど、小さな成功と大きな失敗を無限に繰り返してきた僕は今バンコクにいる。だから少々のことでは揺らぐことはない。しかし今最大のピンチを迎えている。40の大台に乗っかった今年、僕は職を失った。暑い暑い常夏の国にいながらも、心はぶるぶる震え動揺している。そんな最中、前からやってみたかったブログをはじめてみる。
需要があるかはわからない。正直、めちゃくちゃな人生でこれからのあてもなく、どうなるか全くわからない。だからこそ、崖っぷちに立たされた僕がどうなるかをここに綴ろう。
滑走路を間違えた20代
そもそもの間違えの始まりは社会人になり、貯めた資金を元手に株に手を出したということだ。ボロ負けしたんだろ？いやそうではないのだよこれが。勝ってしまった…それも、中途半端に勝ってしまったんだ。
大学を卒業してから広告代理店に入社。新卒全員が震え上がるほど、人道からはみ出した黒より黒い業務内容に、入社1か月もしないうち退職を決意。新卒全員で集合し、やめる手はずを整える。皆でやめるはずだったのにイケイケだった社長に怖気づき、よーいどんっ！で勢いよく飛び出し、振り向いたら誰もついてきていなかった。僕だけが辞めることに。
当時は僕は度重なる寝不足により、色々麻痺していて社長への恐怖など通り越えて、おかしなテンションになっていたからこそ行けたと思う。まだ正気の沙汰を保っていた同僚たちは、スタートの合図があったもののたじろいで出遅れることになる。1人残らず退職するのはまだ先の話だ。
ここから僕の迷い道はすでにスタートしていた。特にやりたいことがあったわけではない。そんな最中、母の友人の大工さんが、暇なら仕事をやらないか？と軽いノリで誘いをくれた。やることもなかったので、とりあえず何か決まるまでの間、手伝おうと決心。もともと景気の良かった大工の棟梁は金銭感覚がバグっていて、日当で16,000円程度もらっていたと記憶している。
1年が経とうとしていたところ、外資系の機構部品メーカーに内定が決まった。なぜ、ここに入ろうと決めたかというと、「外資」という言葉に踊らされていたからだ。しかし、その実情は思い描いてた外資のかけらのかけらもなく、逆に極めて日本的な古い体質の企業だったのだ。
もうこの時から答えは出ていた。自分で何かやねば！と。
株式取引スタートとプランにないビジネスで奔走
大工さんの下で働いていた時から貯めていたお金があったので、株式取引のために目標としていた150万円がすぐにたまり、速やかに売買をスタート。
同時はガラケーながらも、常に更新につぐ更新で〇モードを使い散らかし、購入していた銘柄の金額をチェックしていた。一喜一憂という言葉が僕ほどお似合いな男も稀である。パケット通信料は高かったものの、株式の取引金額が高額だったためか気にすることはなかった。本当に愚かだ。
1000万円の大台には届かないまでも、資金が膨れ上がったことで勘違いをし始める。「金稼ぎなんてチョロいじゃん」と。今でいうなら、一時的に再生数が増えたユーチューバーが勘違いするようなものだろう…違うか。これ例えが違うな。
それはいいとして20代後半にさしかかり、勝負に出ることにを決めていた。毎日毎日満員電車に乗ることに嫌気がさしていた、僕は理想の自分に向ってフライング気味で走り出したのだ。当時の僕は調子に乗った暴走列車。誰が止めても止まるはずもなかった。
決めてから秒で会社を退職し、個人事業主として登録を済ませた。軽い気持ちで外国から何かを輸入しようと思い、コストの安いイメージのある東南アジアをターゲットに。「安いものなんてたくさんあるだろう」と底知れぬ安易さのもと、準備不足で日本を飛び出した。
黒歴史なので詳細は伏せるが、「東南アジアでモノを作って日本で売る」を2年間継続。2年間の良い出会いも裏切りも経験し、キレイに資金がなくなった。これが中途半端に株式投資で勝ち、勘違いをした20代男のなれの果てだ。
もぐらへと向かい始めた30代
この後入った企業がほどほどにパンチの効いた、いわゆるベンチャー企業に就職した。書類が通り、一次面接をクリアして最終面接へ。招かれるがまま最終面接に趣き、テンポ良く会話は進み途中で採用を確信し、安心していた。しばらくして不採用の連絡があったので、「物言い」の連絡を入れるという謎の行動へと移る。今の僕ならドン引きだけどこの後、実際に結果は覆り採用が決まった。
無事に仕事を開始し、ECサイトの運営や新規事業の立ち上げにより、インターネットでものを売る仕組みがわかってきた。数年の月日が経ち、タイ・バンコクへの転勤の話があり、1か月後に行ってほしいと打診をいただく。特に断る理由など、見当たらず快諾する。ここから、バンコクという沼のすさまじいぬかるみに足をとられることになるのだった。
転勤になったものの、1年も経たずにバンコクから戻らなければならない状況に陥り、気づいたのだ。「もう少しバンコクにいたい」と。そう考え、急ぎ足で転職活動を始めた。何社か受かり、その中から自宅からの距離と待遇面を鑑みて、日本でも有名な大手商社に決定。特段やりたいこともなかったので、それでよかった。
ここで2年過ごしたときに、IT時代の知り合いからバンコクで新しい事業をやらないか？との誘いがあった。普段から飲み歩きを一緒にしていいて、かわいがってもらっていたのですぐにOK返答。退職前に名刺もできあがり、オフィスも借りて準備が整いはじめた矢先に悲劇は起こった。
いつものように仕事を終え家路を急ぐときに1本の電話が。なぜかこの瞬間に嫌な予感を察していたため、心して通話ボタンを押したことを記憶している。誘ってくれた社長からの電話で「タイでの会社立ち上げができなくなった」との内容だ。自分にしてはことがうまく進み過ぎると思っていたから、そこまで驚きもしなかった。
タイに来て最大のターニングポイントは、このときだったと思う。
どん底からの追い打ち
退職する寸前に決まりかけていた一寸先のストーリーは、無情にもサクッと破綻してしまった。海外に住んだことのある人ならご存じかもしれないが、この事態は思ってるよりピンチということ。外国人は滞在日数が決まっている。そのため、会社を辞めればVISAを失うからだ。VISAの期限がきれたまま、滞在することを法律は認めない。つまり、外国人の誰もが、犯罪者になりうる才能を持っていることになる。
わけのわからない状況の最中、未曾有のパンデミックが始まった。不幸中の幸いという言葉は幻なのか？と思うほど、仕打ちが僕を襲った。出入国の規制がかかり、街中のお店も営業できなくなっている状態で、人との面会すら難しい。
悩みに悩んだ挙句、商社の取引先で仲の良いお客さんを訪ねた。小さな町工場のようなところで、困りに困った僕を受け入れてくれた。しかしながら、会社の経営でいっぱいいっぱいのため、僕は自分で収入を確保しなければならない。
誰より高いところをとび、誰よりも楽しい人生を送る予定だったのに、気が付けば誰よりも低いところを這いつくばるもぐらのような男になってしまった。
走り切った2年間
ここからの2年間、できることはすべてやり切ったと思っている。仕事の能力が高いわけでもない、平々凡々とした人間ではあるが、それにしてはよくやっていた。
いろいろありすぎるから、ハショッて話すことにする。まずは自分が知識をもっているアパレルの輸入から始まり、クラウドで仕事を受けるライターや日本人とタイ人の間に入り通訳など、安い仕事から高い仕事まで選ばず本当にたくさんやってきた。
ほぼほぼ自分の力のみで切り盛りしてきたからこそわかる、会社のありがたみと経営者のすごさ、底辺ながらもこれはこれで良い経験をしたと思っている。
転機は突如としてくるもので、2つの選択を迫られることになる。疲れ気味だった僕はここでも判断をミスることになるのだが、その時は無論気づいていない。
商社時代の客先であった方（共通の客先に営業に来ていた方）と仲良くなり、名刺交換をしたことがきっかけで、食事をするようになった。何回か食事を繰り返すうちに会社に誘われたのだ。未知数ではあるものの、トライすることを決意。まったく知見のない業界へと飛び込んだ。
今思えば、せっかく軌道に乗っていた自分のビジネスで走り切らなかったのだろうと悔いが残る。
間違えた選択。愚かな結末
そして、軌道に乗っていたことを一度打ち切りにして、新しい日々がスタートを切った。バンコクのアソークという中心部にオフィスを構え、人数の割にスペースを広くとり、洒落こんだ作りの内装だ。外を歩けば有名な繁華街ソイカウボーイはすぐそこにある。観光で来る人からすれば、願ってもない夢のような環境であろう。
しかし、入ってほどなくして「これは違う」感が脳内を占領した。先進的なスタイルのオフィスとは裏腹に、業務ときたら古典的な手法のオーナー企業だったのだ。古典的なやり方が悪いと思ったことは一度たりともない。だけど、僕にとってそれは合わないやり方でしかなかった。
顧客に気に入られるためにはわざわざ行く必要のない用事でさえ、100kmをゆうに超える道のりを走る。会うことが目的、気に入られることが目的になり、本質を見失っているような気がしてしまう。これは商売の種類によっては仕方のないことであることは心得ているつもりだ。
これはインターネットを駆使して商売をしてきたため、そういう類のコミュニケーションが苦手になっていた。人間なので仲良くなれたらうれしいし、気が合えばなお良いに決まっている。だけど気に入られるために打算的なことをしたり、時間をかけたりすることは僕の脳にはプログラムされていない。
気に入られることを目標としている人たちからは、「私は人脈があるから」という言葉を耳にする。「人脈」とかいうふわっとした脆弱な幻想に身を委ねて仕事をしたくないのだ。そもそも、人脈自慢は片思いが多く、本人が思っているほど好かれていないし、むしろ嫌われてることがある。相思相愛であれば、何らかの形でお声がかかるはずだ。普段から何もないのであれば、困った助け船はないと考えてよし。
かれこれ1年ちょっとが経過して疲弊し、思考が止まりかけていることに気づいた。「早く辞めなくちゃ」という気持ちが繁殖していて、限界に達していた。そんな気持ちは周りから見ていても、わかるもので友達からは「最近疲れてそうだね」と感づかれていた。そして、私を誘ってくれた社長でさえもやる気のなさに気づき「この先どうするの？」と声をかけてくる始末。
僕はやめることを決断した。何も決めずに辞めたので、VISA問題・経済的な問題で苦しくなることは明白。話し合いの後は無情なほどに早くVISAが切られることになり、一旦日本へ帰りざるを得ない状況に陥った。VISAの期限切れを前にして僕は日本へと立った。そして、タイへ戻った。
何のプランもなく戻ったので、さあどうしようと思っているのが今の状況だ。
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